開催趣旨:
第3回となる本COEプログラム国際シンポジウム「アジア地域文化学の構築」は、 これまでのI、IIの成果を継承し、来年度の最終報告にむけて「アジア諸地域の秩序」を主題として開催される。
専攻と分野が異なる8チームによって遂行される本プログラムは、これまでのアジア像が、近代国家の枠組みを前提に、それを遡及させる形で論じられがちであったことに対し、その枠組みを一旦相対化し、波及する広域文明─アジアの場合は中国文明─と、そのうねりのなかで形成される地域文化との関係性を軸に、多元で重層的な新しいアジア像創出をめざす試みとして出発した。
そのために本プログラムは、戦国秦が六国を併合する過程でおこなった巴蜀およびそれと対照的な楚の征服のなかに広域文明と地域文化の関係性の典型がみられるとして、四川モデルという方法概念を提起した。
秦が巴蜀と楚という異質な要素を支配に組み込むことにより中原文化ははじめて中国文明となり、次の漢はいわゆる「冊封体制」という世界秩序の理念を構想し得たのである。
I、IIのシンポジウムでは、この四川モデルの使用によって7世紀までの中国・朝鮮・日本の東アジアにおける中国文明と地域文化の関係のダイナミズムを相当程度、浮き彫りにし得たと考える(玉突き理論)。
さらに四川モデルはそれにとどまらず、例えば、清朝末期の「西洋の衝撃」、戦後日本とアメリカの占領を地域文化と広域文明の視点から捉え直す場合にも有効な方法概念となろう。
また本プログラムが提起した研究手法であるエンハンシングは、アジア地域文化学の研究者と研究対象の関係は、対象となる地域文化の価値に関心を払い、現地の研究者との共同研究やそこに住む人々との協力関係のなかで行うことをいう。
これは本研究が、戦前の日本の「満鮮」研究と異なることは勿論、それと訣別したはずの戦後日本のアジア研究、あるいはアメリカの国際戦略の展開を支えた地域研究(Area
studies)と同質でないことを示すものである。
今回のシンポジウムは、秩序を主題とし、地域を地域として成り立たせる要素の一つである地域秩序について検討する。中国文明の下でいえば、礼と法がそのキーワードである。
個人の一挙手一投足から国家制度までを規定する規範としての礼、強制力によって規範の実行を担保する法。
中国文明下の秩序は、この礼と法により作られ維持された。
しかし元来は、礼は士の世界、法(刑)は庶の世界と弁別され、秩序構造は階層的であった。 礼が庶の世界に下る時期は、士─庶が職能上の区別に過ぎなくなる時代に重なる。さらに中国文明下の法の問題として、「判決の確定力観念の不存在」という有名な命題があり、極論すれば、権力の法の強制は最終的に秩序を担保しなかった。紛争は、法の裁定ではなく当事者同士の合意により最終的に解決する。官の判決は、調停であり合意の勧告に過ぎない。
勧告と合意、これが約の世界である。 とすれば地域社会の秩序原理には、約というキーワードを付け加えなければならない。
シンポジウムでは、秩序を法という語に代表させるが、こうしてみるとアジア地域文化学における中国文明の法(律令)の問題は、その伝播・広がりを他地域への横への動きと、地域内での縦への動きの両方向から考察せねばならなくなる。
これらを26日の1部・2部で考察する。
21世紀COEプログラムは、採択された研究課題に従事する若手研究者の養成が求められ、かつ研究拠点を形成しての事業の継続が課せられている。
27日の若手研究者によるパネルディスカッションは、本プログラムのその要請への対応である。 さらに例年の各チームによる現場からの報告は、本年は4チームの3年間にわたる総合成果の発表の場とし、最後にそれらを含め本プログラムの現時点での到達点を、全体討論のなかで確認する。
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